(最終更新日:2018/06/26)
3か月経過後の相続放棄申述をする際に提出した上申書(事情説明書)の例です。実際に使用したものをベースにしており、すべて申述が受理されたものを掲載していますが、個人情報保護のため修正を加えています。
申立てをする際の参考にしていただいて差し支えありませんが、同様の事例にみえても受理されるとは限りませんし、当事務所では結果について一切の責任を負いかねます。3ヶ月経過後の相続放棄手続きについては、専門家に相談した上で申立をすることをお勧めします。
相続放棄の相談室は「松戸駅徒歩1分の高島司法書士事務所」が運営しています。当事務所へのご相談については、ご相談予約・お問い合わせのページをご覧ください。また、千葉県松戸市の当事務所までお越しになるのが難しい方のために、メールによるご相談を前提とする全国対応の相続放棄手続、有料メール相談も承っております。
・上申書・事情説明書の記載例(1・2・3・4)
1.市役所からの固定資産税の納税義務者の設定についての通知
2.債務整理を委任していた弁護士からの通知
3.相続債権者(保証会社)からの通知
4.市役所からの相続人代表者指定通知書
5.債権回収会社(サービサー)からの通知
1.市役所からの固定資産税の納税義務者の設定についての通知
私が、被相続人Aの死亡を知ったのは、平成○年○月○日、○○市総務部税務課から「固定資産税の納税義務者の設定について」との通知が届いたことによります。
私は、被相続人である父と母Bの子ですが、父母は30年以上前に離婚しています。それ以来、私も母も被相続人とは全く交流が無かったので、同人の生死や暮らしぶりなどを知る機会はありませんでした。また、母は平成○年○月○日に亡くなりましたが、その際も、被相続人とは連絡を取っていません。
それが、○○市からの上記通知により、被相続人の死亡の事実、および同人が不動産を所有していたことを知った次第です。
上記の通りの事情なので、私が被相続人についての「相続の開始を知った日」は、上記通知が届いた平成○○年○月○日であることに相違ありません。
2.債務整理を委任していた弁護士からの通知
被相続人A(平成○年○月○日死亡)のは私の父です。被相続人は、生活保護を受けながら1人で暮らしていました。亡くなる前の数年間は全く連絡を取ることもありませんでした。
平成○年○月○日に、警察からの連絡で父の死亡を知りました。孤独死だったとのことで、住んでいたアパートに置かれていた古い携帯電話から、私たちの連絡先を調べたそうです。
平成○年○月○日に、○○市生活支援課職員の人と一緒に、被相続人が暮らしていたアパートの部屋に入りました。そして、部屋の中にあるものを調べましたが、とくに金銭的な価値があるものは発見されませんでした。
被相続人は生活保護を受けていたため、財布の中にあったお金と合わせた全財産約○円は役所の人が持ち帰りました。そのお金は葬儀費用に充てたとのことです。
また、部屋の中に債務に関する書類はありませんでした。そこで、被相続人には金銭的価値のある財産も負債も全くないと判断するに至り、相続放棄をする必要があるとは全く考えていませんでした。
ところが、平成○年○月○日付の弁護士からの父宛の通知が、○月○日に私の自宅に転送されてきました。すぐに、弁護士に電話で事情を確認したことにより、父の債務の存在を知りました。部屋の中に、借金に関する契約書や督促状などが全く置かれていなかったのは、弁護士に債務整理を依頼していたからだと思われます。
上記により、私にとっての、相続放棄の熟慮期間の起算点である「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、上記通知が届き、弁護士から事情を聞いた日である平成○年○月○日です。このような次第ですから、今般、私は相続放棄の申述をいたします。
3.相続債権者(保証会社)からの通知
私は、被相続人A(平成○年○月○日死亡)の長男です。
子供の頃は、父と一緒に生活していましたが、昭和○年、私が20歳の頃に父は家を出て、そのまま帰ってきませんでした。最初の数年間は、人づてに近況を知らされることがあったものの、その後、30年ほどは全く交流がなく消息も分からない状況でした。
それが、平成○年○月○日、○○信用保証からの通知書が届いたことで、父の死亡の事実および債務の存在を知りました。
上記により、私にとっての、相続放棄の熟慮期間の起算点である「自己のために相続の開始があったことを知った時」は、上記通知を受領した日である平成○年○月○日です。
このような次第ですから、私は、被相続人Aの相続を放棄することを申述いたします。
4.市役所からの相続人代表者指定通知書
私は、被相続人である父A(平成○年○月○日死亡)の長女です。被相続人の法定相続人に当たるのは、私と、私の弟Bの2人です。
父は生前に、長男B(私の弟)の借金返済の肩代わりのために、資産のほとんどを使い果たしてしまっていました。そのため、平成○年○月○日に父が亡くなったときに残っていたのは30万円ほどの銀行預金のみでした。このお金も、父の死後すぐに、Bが勝手に引き出し、自分のために使ってしまいました。
また、父が住んでいた家屋およびその敷地については、祖父の名義だと考えていましたから、父には相続財産が全く存在しないと考えていました。
なお、祖父は父よりも先に亡くなっているので、私も、父の相続人としての権利を承継していることにはなります。しかし、弟は、借金についての債務整理は済んだものの、滞納していた税金の支払いなどで苦労しているようです。そのため、祖父、父、いずれの財産であったとしても、私が引き継ぐものは全く無いと考え、何の手続きもしないでいたのです。
平成○年○月○日、○県○市からの「相続人代表者指定通知書」が届きました。文書を見ても意味が良くわかりませんでしたが、注意事項として「上記処分について不服がある場合には、この文書を受け取った日の翌日から起算して60日以内に市町に対して異議申立をすることができます。」と書かれていたので、この期間内には、市役所に問合せをしなければならないと考えました。
普段は仕事をなかなか休むことができないので、ようやく時間が取れた平成○年○月○日に市役所へ出向きました。ところが、資産税係に行ってみると担当者が不在だと言われました。そこで、対応してくれた市役所職員と話をすることになりました。途中から、もう1人職員の方が加わり1時間ほど話をしました。
私は、自分以外の税金を払う余裕など無いことを伝え、どうすれば良いのかと質問しました。しかし、市役所職員の2人からは明確な回答が無く、「相続人不存在という方法で進めていく方法もありますが…」などとの曖昧な話が出るのみでした。それでも、「わざわざ市役所まで来てくれたのだし、話は分かりました」というようなことを言われ、担当者から折り返し電話をしてくれることになりました。
そこで、自宅の電話番号を伝えて市役所を後にしたのですが、緊急時にすぐに連絡が取れないといけないと心配になり、もう一度、資産税係に戻って携帯電話の番号も伝えました。私としては、市役所の人に話をして連絡先もちゃんと伝えたのだから、もう大丈夫だと考えていました。また、このときには相続放棄との話は一切出ませんでした。
平成○年○月○日になってようやく市の担当者から電話がありました。話を聞くと、私に、父所有建物についての固定資産税の支払い義務があるというのです。そして、支払い義務から逃れるためには、相続放棄をするしかないと伝えられました。
この時になって、父が不動産を所有していたこと、そして、その不動産に固定資産税が賦課されていることを初めて認識しました。つまり、父に相続すべき財産が存在していたことを知ったのはこの時です。
よって、私にとっての、相続放棄の熟慮期間の起算点である「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、上記の事情を知った日である、平成○年○月○日です。
なお、上記の「相続人代表者指定通知書」を受け取ったときからは3か月が経過していますが、平成○年○月○日に市の担当者から話を聞くまでは、父の相続財産の内容を知ることはできなかったのですから、この時から熟慮期間が起算されることはありません。
ところで、「相続放棄の申述がされた場合、相続放棄の要件の有無につき入念な審理をすることは予定されておらず、受理がされても相続放棄が実体要件を備えていることが確定されるものではないのに対し、却下されると相続放棄が民法938条の要件を欠き、相続放棄したことを主張できなくなることにかんがみれば、家庭裁判所は、却下すべきことが明らかな場合以外は、相続放棄の申述を受理すべきである(東京高等裁判所 平成22年8月10日 家月6巻4号129頁)」ともされています。
このような次第ですから、私は、被相続人Aの相続を放棄することを申述いたします。
5.債権回収会社(サービサー)からの通知
私は、被相続人A(平成○年○月○日死亡)の妻です。同時に相続放棄申述をする、長女B、長男Cは、被相続人と私との間の子です。
夫は、病気のため自宅で療養をしていました。亡くなった際に保有していた財産は銀行預金○円のみで、このお金は医療費の一部に充てました。年金も支給されていなかったので、その他には全く財産がありませんでした。
また、とくに債務も無いと考えていたので、夫には相続する財産は何も無く、相続放棄が必要だとは全く思っていませんでした。
ところが、夫に宛てた○○債権回収名義の通知が自宅へ届きました。そこで、平成○年○月○日、長女Bに自宅へ来てもらい内容を確認したことで相続債務の存在が発覚しました。
上記により、私および長女にとっての、相続放棄の熟慮期間の起算点である「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、上記通知により相続債務の存在を知った時である、平成○年○月○日です。
また、長男Cに対しては、平成○年○月○日に上記債務の存在を電話で知らせました。したがって、長男についての「自己のために相続の開始があったことを知った時」は、平成○年○月○日です。
このような次第ですから、私たちは、被相続人Aの相続を放棄することを申述いたします。
上申書・事情説明書の記載例(その2)
(関連ページ)3ヶ月経過後の相続放棄もご相談ください
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