相続の限定承認の申述手続きについて

1.限定承認とは

限定承認とは、相続人が、その相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務等を弁済するものとして、相続の承認をすることです。

ある人に相続が開始した場合、相続人が選択できるのは、単純承認、相続放棄、限定承認の3つです。単純承認では被相続人の権利義務を無限定に引き継ぎます。反対に、相続放棄をすれば被相続人の権利義務の一切を引き継ぎません。

これらに対し、限定承認では、被相続人の債務が相続財産を超えている場合でも、その相続財産の範囲内で債権者への支払いをすれば済みます。そして、全ての債務を支払っても残余財産がある場合に、その財産を引き継ぐことができるのです。

民法第922条(限定承認)

 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

2.限定承認の申述受理の申立て

相続人全員が申述人となる必要があります(相続放棄した人を除く)。相続放棄は一部の相続人からでもできますが、限定承認は相続人全員でなければできないのです。

自己のために相続の開始があったことを知ったときから、3ヶ月以内に家庭裁判所へ限定承認申述の申立てをしなければなりません。

被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

・申述書、遺産目録

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

・被相続人の住民票除票(または戸籍の附票)

・申述人全員の戸籍謄本

・収入印紙(800円)

・郵便切手(相続人1人について82円×4枚,10円×4枚)

※必要な切手は裁判所により異なる場合があります

上記必要書類は、被相続人の配偶者および子が限定承認の申述をする際に、最低限必要な書類です。限定承認は相続人の全員からしなければなりませんから、相続人の全員が明らかになる戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本など多くの書類が必要となるのです。

提出すべき戸籍謄本などが同じものである場合には1通で足ります。たとえば、被相続人と申述人が夫婦であれば戸籍謄本は同一です。親子の場合には、未婚の子であれば戸籍謄本は親と一緒ですが、結婚すれば新たに戸籍が作成されるので、それぞれ別の戸籍謄本が必要です。

3.限定承認の申述受理後の、相続財産の清算手続

限定承認の申述が受理されたら、限定承認者(相続人が複数のときは、申述の受理と同時に選任された相続財産管理人)によって、相続財産の清算手続きをおこないます。

はじめに、法定の期間内(限定承認者の場合は5日以内、相続財産管理人の場合は選任後10日以内)に、すべての相続債権者および受遺者に対して、官報公告の手続きをします。その後は、法律にしたがって、債務の弁済や相続財産の換価などの清算手続を行っていくことになります。

上記のような手続きにより、すべての債務を支払ってもまだ残余財産がある場合にのみ、限定承認者はその残余財産を引き継ぐことができるわけです。限定承認とは、このように大がかりな手続きが必要となるので、「債務が多いかもしれないから、とりあえず限定承認をしておこう」というような目的で選択すべきではありません。

したがって、現実には限定承認を選択すべきであるケースはあまり多くないと思われますが、プラスの財産も多いが、借金もかなりの額になると予想されるような場合に検討すべきだといえるでしょう(平成23年の、全国の家庭裁判所での新受件数は、相続放棄が16万6,463件に対し、限定承認が889件でした)。

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