法定相続人が未成年者であっても、成人である場合と同様に、被相続人の権利義務の一切を相続します。そのため、被相続人が債務超過の状態であるときには、未成年者についても相続放棄の手続きが必要なこともあります。
家庭裁判所へ相続放棄の申立をする際、申述人(相続人)が未成年者の場合には、法定代理人である親権者(または未成年後見人)が、未成年者に代わって手続きをおこなうのが原則です。ところが、法定代理人(親権者、未成年後見人)と未成年者との間で利益が相反する場合、その未成年者のための特別代理人選任を家庭裁判所へ請求しなければなりません。
1.特別代理人選任が必要であるかの判断方法
未成年者のために特別代理人選任が必要な具体的なケースは次のとおりです。いずれも、相続放棄申述をすることで未成年者に不利益が生じるおそれがあるからです。
- 未成年者と法定代理人(親権者)が共同相続人であって、未成年者のみが相続放棄申述をする場合(親権者が先に相続放棄をしている場合を除く)。
- 複数の未成年者の法定代理人(親権者)が、一部の未成年者のみを代理して相続放棄申述をする場合。
このような場合でも、親権者が未成年者の法定代理人となり相続放棄ができるとすれば、子供だけに相続放棄をさせることで、親権者である親が遺産を独占することも可能となってしまいます。すべての親が子の利益になるよう行動するとは限りませんから、このような判断がされるのも仕方の無いところでしょう。
未成年者と法定代理人との利益が相反する場合が問題なのですから、たとえば、親権者が相続放棄申述をした後に、未成年者全員を代理して相続放棄する場合、また、親権者と未成年全員が同時に相続放棄する場合には特別代理人選任は不要です。つまり、原則どおり親権者が未成年者の相続放棄申述受理申立をできるわけです。
2.未成年者が相続放棄できる期間
法定代理人(親権者など)が未成年者の相続放棄をする場合、相続の承認または放棄をすべき期間は、その法定代理人が未成年者のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内です。法定代理人が、未成年者のために相続放棄が必要なのかを判断し手続をするのですから、未成年者が相続放棄できる期間も、法定代理人が基準となるわけです。
民法917条 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、民法915条第1項の期間(相続の承認または放棄をすべき期間)は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
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