被相続人の子(または、その代襲者)の全員が相続放棄した場合、存命の直系尊属がいないときには、被相続人に兄弟姉妹がいれば相続人となります。

疎遠になっている兄弟姉妹が亡くなった場合に、知らぬ間にその子たちが相続放棄していたということもあるでしょう。そのようなときに、兄弟姉妹が相続人となっていることを知らずにいたために、期限が過ぎてしまって相続放棄ができなくなることがあるのでしょうか

放棄したことを後順位相続人に知らせる必要があるのか(目次)
1.相続放棄したことは通知されません
2.被相続人の兄弟姉妹が相続放棄できる期間
3.先順位者が放棄したのを知らなかった場合
4.相続放棄申述の有無についての照会
5.被相続人の子と兄弟姉妹は同時に相続放棄できるか

1.相続放棄したことは通知されません

まず、先順位者である相続人の全員が相続放棄をしても、その事実を裁判所から後順位者に通知するような制度はありません。また、自分自身が相続放棄をした際に、そのことを後順位者に通知しなければならないというような決まりもありません。

被相続人の子からすれば、被相続人の兄弟姉妹とは、おじ(叔父、伯父)、おば(叔母、伯母)に当たります。被相続人である父の生前から、親戚付き合いが一切途絶えていたような場合に、自分たちが相続放棄したことを伝える必要があるのかとのご質問をいただくことがあります。

もちろん、子の全員が相続放棄をした場合、そのことを後順位の相続人へ伝えた方が親切であることはたしかでしょう。通知をしなかったとすれば、後順位者の相続人としては、自らの知らぬ間に相続人になっている状況におかれてしまうわけです。

そのまま3ヶ月間が経過してしまったとすれば、その後に相続放棄するのは難しいのでは無いかとの心配をする方もいるでしょう。

2.被相続人の兄弟姉妹が相続放棄できる期間

先順位の相続人がいる場合の相続放棄できる期間は、先順位者が相続放棄したことにより、自分が相続人となったのを知った時から3ヶ月です。

相続放棄ができるのは「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内ですが、自己のために相続の開始があったことを知ったというためには、「相続開始の原因である事実」および、それによって「自分が法律上の相続人となった事実」を知ることが必要です。

被相続人に子がいる場合、被相続人が死亡してもすぐに兄弟姉妹が相続人となることはありません。先順位相続人の全員が相続放棄をしたことによって、兄弟姉妹が相続人となるわけです。つまり、先順位相続人の全員が相続放棄したのを知った時が、「自分が法律上の相続人となった事実を知った時」となり、その時から3か月の熟慮期間がスタートするのです。

3.先順位者が放棄したのを知らなかった場合

先順位者が相続放棄した事実を知らなかった場合には、3ヶ月間の熟慮期間は開始しません。

たとえば、被相続人の子たちが相続放棄した事実を、後順位者に知らせていませんでした。そのまま、3か月が経過した後になって、被相続人の債権者から兄弟姉妹に通知が行ったことで、先順位者全員が相続放棄したことを知ったとします。

この場合、その債権者からの通知書を受け取ったときから3か月以内であれば、問題なく相続放棄をすることが可能なのです。

ただし、先順位者の全員が相続放棄してから3か月が経過した後に相続放棄できるのは、先順位者が放棄した事実を知らなかった場合に限られるので要注意です。知らなかった場合にのみ、知った時から3か月以内であれば相続放棄できるのですから、その事実を裁判所へ明確にする必要があります。

このようなケースで実際に相続放棄をしようとするときは、司法書士など専門家に相談した上で申立てをおこなうのがよいでしょう。

4.相続放棄申述の有無についての照会

ここまで解説してきたとおり、被相続人の兄弟姉妹(または、その代襲者)が相続放棄できるのは、「先順位者が相続放棄したことにより、自分が相続人となったのを知った時から3ヶ月」です。

「知った時から3ヶ月以内」であれば、相続開始(被相続人の死亡)からどれだけ時間が経っていても相続放棄できるわけですから、被相続人子たちと交流が途絶えているため、相続放棄したことを知らせてくれない恐れがあるという場合でも、とくに心配は必要ないことになります。

そうは言っても、「亡くなった兄弟姉妹に借金がありそう」なときなど、もしも、被相続人の子たちが相続放棄するならば、兄弟姉妹である自分たちも早急に相続放棄したいと考えるときもあるでしょう。

そのようなときには、家庭裁判所に対して「相続放棄申述の有無についての照会」をすることができます。たとえば、相続開始から3ヶ月が経過した頃に裁判所への照会をおこなうことで、被相続人の子たちが相続放棄したかを知ることができます。

相続放棄申述の有無についての照会の手続きについても、当ウェブサイトを運営する松戸の高島司法書士事務所へご相談ください。

5.被相続人の子と兄弟姉妹は同時に相続放棄できるか

この記事の本題からは逸れますが、被相続人の子全員が相続放棄することにより、兄弟姉妹(またはその代襲者)が相続人になることが確実な場合、被相続人の子が相続放棄する際に、兄弟姉妹も同時に裁判所で手続きをすることはできるのでしょうか。

答えは、被相続人の子と兄弟姉妹が同時に相続放棄することはできません。上記のとおり、相続放棄できるのは「自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内」です。先順位相続人に放棄していない人がいるときには、兄弟姉妹は法律上の相続人となりません。法律上の相続人では無いのですから、相続放棄できないのは当然です。

早く手続きしないと心配だからと同時に手続きすることを希望する方もいますが、このことは法律の規定ですから仕方ありません。先順位者が手続きをしている間に準備を済ませておき、先順位者に対して相続放棄申述受理通知書が届いたらすみやかに申立てをおこないます。

相続放棄の手続きをするにあたり、分からないことや少しでも心配なことがあれば、司法書士などの専門家に相談した上で進めていくことをお勧めします。松戸の高島司法書士事務所では、経験豊富な司法書士がすべてのご相談に直接ご対応しておりますから安心してご相談ください。