被相続人が住宅ローンを組んでいるときでも、「団体信用生命保険」に加入している場合には、保険会社から支払われる保険金で住宅ローンが完済されます。これにより、住宅ローンの残金を支払うこと無く、不動産(土地、建物)の所有権が、相続人のものになります。

そのため、主な債務が住宅ローンのみであって、団信に加入しているときには、そもそも相続放棄を検討する必要はないわけです。また、住宅ローン以外の債務がある場合であっても、相続した不動産を売却すれば債務を完済できるのであれば、債務超過ではないことになります。

住宅ローンを組む際、ほとんどの民間金融機関(銀行など)では、団体信用生命保険(団信)への加入が住宅ローン融資の条件となっています(住宅金融支援機構のフラット35では任意)。したがって、相続債務に住宅ローンがあるときには、まず、団信に加入していたかどうかを確認するべきです。

団信に加入しているときの抵当権抹消登記

団信に加入していた場合、相続人への所有権移転登記(相続登記)をした後に、抵当権抹消登記をすることになります。その流れは次のようになります。

相続人から金融機関に対して住宅ローン債務者の死亡の事実を伝え、死亡診断書などの必要書類を提出すると、金融機関に対して保険金が直接支払われます。これにより、住宅ローンが完済されますから、金融機関(または、保証会社)から抵当権抹消のための必要書類が交付されます。

抵当権抹消登記をするためには、その前に、不動産の名義を相続人に変更する必要があります。団信により住宅ローンが完済されるのは相続開始後ですから、抵当権抹消登記の登記権利者となるのは相続人だからです。実務上は、相続を原因とする所有権移転登記の後、続けて(連件で)抵当権抹消登記をします。