再転相続について、まずは下の図により説明します。

再転相続

令和元年6月1日に祖父Aが死亡し、父Bが相続人になりました。しかし、Bは、Aの相続について相続の承認や放棄をしないまま、令和元年8月1日に死亡しました。そのため、Bの子であるCがさらに相続人となっています。

このように、ある人が熟慮期間中に相続の承認や放棄をしないまま死亡し、その人の子などがさらに相続人になった場合のことを再転相続といいます。

再転相続の熟慮期間については、民法916条で「相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、民法915条1項の熟慮期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する」としています。

ここでいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」の解釈について、最高裁が判断を示しています(最判令和元年8月9日)。

これまで上記のケースにおいては、「Cは、Aの相続の開始があったことを知らなくても、自己のためにBの相続の開始があったことを知ったときから、Aの相続についての熟慮期間が起算される」との説が有力でした。また、BがAの相続が開始したことを知らずに死亡した場合も、起算点は上記と同様だとされていました。

しかし、今回の最高裁判決では、これとは異なる判断を示しました。

民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知った時をいうものと解すべきである(最判令和元年8月9日)。

この最高裁判決により、Cの熟慮期間の起算点は、Bからの相続により、「Aの相続人としての地位を自己が承継した事実を知ったとき」であることになります。

なお、上記裁判で争われたのは、「伯父から借金を相続した父が承認も放棄もせずに死亡したことで、子である自分が知らないうちにその借金を相続することとなっていた」という事例です。

「再転相続人である子は、自己のために父からの相続が開始したことを知ったからといって、当然に父が伯父の相続人であったことを知り得るわけではない」ことなどを理由に、伯父の相続人としての地位を自己が承継した事実を知った時が、「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」であるとしています。

第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

第916条 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第1項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。