相続放棄申述書を家庭裁判所へ提出してしばらくすると、家庭裁判所から封書が郵送されてきます。封筒の中には、「照会」・「照会書」などと書かれた文書と「回答書」が入っているのが通常です(照会書と回答書が一体の文書になっているものもあります)。

当事務所に相続放棄手続きのご依頼をいいただいた場合、照会書や回答書をご持参いただくか、メール・FAXなどでお送りいただき、内容を確認した上で、記入すべき内容をご案内しています。

家庭裁判所からの照会事項に明らかな間違いが

先日送られてきた照会書は、被相続人の甥(姪)に対するものでしたが、照会事項に問題がありました。「被相続人の死亡日から3ヶ月以内に相続放棄の申述をされなかった理由をご記入ください」とあったのです。

先順位者がいる場合には、被相続人の死亡と同時に相続人になるわけではありません。先順位者が相続放棄をしたことにより、はじめて相続人となるわけです。したがって、被相続人の死亡日から3ヶ月以内に相続放棄の申述をしたかどうかは審理に関係なく、上記照会事項は明らかに誤りであるといえます。申述人が被相続人の甥や姪では無く、被相続人の子であると勘違いしてのものだと考えられます。

今回は、私が家庭裁判所へ問い合わせをしましたが、担当書記官からは「先順位者の放棄を知ったのは○月○日なので、その時からは3ヶ月内に相続放棄の申述をしています」というような理由を書いてくれとの回答。照会書を再送するのは裁判所内の手続き上も大変なのでしょうし、それ以上の追求はしませんでしたが、自分のミスであるとの発言は結局ありませんでした。

私は司法書士として多数の照会書を見てきましたが、このような初歩的な誤りがあるものは初めてです。専門家が関与せずに相続放棄の申立をしたケースで、このような照会書が届いたとしたら大いに混乱したことでしょう。

極めてまれな例だとは思われますが、裁判所からの書類であっても絶対に正しいとは限らないという一例です。ご参考までに、送られてきた照会書は下記PDF文書のとおりです。

相続放棄照会書の一例