相続放棄をするには家庭裁判所への申立が必要ですが、この申立ができる期間は「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」と定められています。海外在住者の方であっても特例措置はありませんから、相続開始(被相続人の死亡)から3ヶ月以内に申立しなければならないのが原則です。

海外在住者の相続放棄手続き(目次)
1.海外在住者が相続放棄するときの必要書類必要書類についての追記あり
2.相続放棄手続きの流れ
3.EMS(国際スピード郵便)による照会書の送付

1.海外在住者が相続放棄するときの必要書類

海外在住者が相続放棄する場合、通常の必要書類に加えて在留証明をご用意ください(相続放棄申述書に記載する住所は在留証明書に書かれている住所です)。戸籍謄本は日本で取得する必要がありますが、司法書士が代わりにお取りすることもできます。

また、申立先の裁判所によっては在留証明のほかに、署名証明(サイン証明)の提出を求められることもあるようなので、管轄の裁判所へ事前に確認するようにしてください。なお、相続放棄の手続きをするのは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

(2021/01/08 追記)
当事務所で最近取り扱ったケースでは、海外在住者の相続放棄手続きであっても、日本国内に居住している相続人の場合と変わりなく、戸籍謄本以外の添付書類の提出を求められることはありませんでした。

ただし、このケースでは他の相続人(日本国内に居住)の住所を送達場所とし、海外にいる申述人との書類のやり取りはその相続人を経由しておこないました。

そのため、相続放棄の申立てをする際に送達場所の届出をしています。このとき提出する送達場所の届出書では、送達場所の届出に加え、送達受取人の届出もします。また、裁判所から、送達受取人との関係も記載するよう求められました。

このようにすれば、裁判所としては照会書等の送付を送達場所に対しておこなうことができるので、申述人が日本国内に住んでいる場合と何ら変わりがないこととなります。また、日本国内に送達場所となる親族などがいない場合であっても、司法書士事務所を送達場所にすることも可能だと思われます。

海外在住者の相続放棄手続きの進め方については、管轄裁判所での取り扱いを最初に確認するようにしてください。

2.相続放棄手続きの流れ

申立をする際には、司法書士が作成した相続放棄申述書に署名(押印)をいただきます。メールで送信した相続放棄申述書をプリントアウトしてご利用いただくのがベストですが、どのように書類のやりとりをするかはご相談の上で決定します。

相続放棄申述書等の必要書類が用意できたら、司法書士が裁判所への申立をおこないます。よって、ご依頼者(相続人)が海外在住であっても、申立をするに当たっては全く問題がありません。

けれども、相続放棄の手続きは申述書(申立書)を裁判所に提出しただけでは完了しません。通常は、裁判所から申立人に対して文書による照会がおこなわれます。この照会書に申立人本人が記入し裁判所へ返送することによって、申立人の意思確認にもなるわけです。

3.EMS(国際スピード郵便)による照会書の送付

どのように書類のやりとりをするかは事前に家庭裁判所へ確認するべきですが、先日、申立をした際はEMS(国際スピード郵便)を利用しました。

具体的には、申立をする際に、照会書の送付用と、相続放棄申述受理通知書の送付用として、2組のEMS用の封筒および必要な切手を提出したのです。裁判所はその封筒を使って書類を発送するだけですから、とくに事務作業が増えることもありません。

EMS(国際スピード郵便)の配達日数は3,4日の国が多いので(日本国内の差し出し地によっても異なります)、海外在住者だからといって極端に時間がかかるようなことはありません。

それでも、海外在住者の方が相続放棄をしようとする場合は、時間に余裕を持ってご相談くださるようにしてください。日本在住のご家族の方が相談にお越しいただいても結構ですし、それが難しければまずはメールでお問い合わせいただくのが良いかと思います。