相続が発生し、法律上は自分が相続人になっているのに、その事実を知らずにいることがあります。たとえば、両親が離婚して以来ずっと会っていなかった父(または母)や、親戚付き合いが途絶えていた叔父、伯母など場合には亡くなった事実すら知る機会が無いでしょう。

固定資産税の納税義務者に関する通知書

上記のような事情がある場合で、市役所の税務課などから「固定資産税の納税義務者」に関する通知書が届いたことで、被相続人の死亡の事実を知ったとのご相談をいただくことがあります。

不動産を所有している方が死亡した場合、その相続人が固定資産税の納税義務も引き継ぎます。しかし、身近に相続人がいないなどの理由により、不動産の名義変更がおこなわれないままになっていたとします。この場合、不動産所在地の市区町村が所有者の相続人を探し出し、固定資産税の納税義務者を届け出るよう通知をするのです。

相続の承認・放棄の選択

市役所からの通知書が届いたことで、被相続人の死亡の事実および自分が相続人となっていることを知りました。この場合の選択肢としては、相続人を単純承認して不動産やその他の相続財産を引き継ぐか、または相続放棄をすることになるでしょう。

生前の暮らしぶりどころか、亡くなってことすら知らなかった人の遺産を相続するのは不安も大きいです。通知の対象となった不動産以外に債務(借金)があるかもしれませんが、それを調査するのも困難な場合が多いと思われます。

このような場合では、現時点で債務が発覚していなかったとしても、相続放棄を選ぶケースが多いと思われます。相続放棄をしたとすれば、不動産を相続することはできませんが、その他の厄介なトラブルに巻き込まれる心配も無くなります。

相続放棄をできる期間

なお、このようなケースでは被相続人の死亡の事実すら知らなかったわけですから、たとえ被相続人の死亡から3ヶ月以上が経過していても相続放棄が可能です。市役所からの通知により被相続人の死亡の事実を知ったとすれば、その時が熟慮期間の起算点となりますから、知った時から3ヶ月以内であれば相続放棄が出来るわけです。

被相続人の本籍地、住所の調査方法

相続放棄をする際には、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きをしますが、このときに被相続人の死亡の記載のある戸籍と住民票が必要となります。しかし、被相続人の生前に交流が無かった場合には、本籍地どころか、正確な住所さえ分からないことも多いでしょう。

本籍地、住所のどちらかでも分かっているのであれば問題ありません。本籍地が分かるのなら戸籍の附票を取ることで住所を知ることができます。また、住所が分かるのなら本籍地入りの住民票を取れば済みます。

どちらも分からない場合、最終の本籍地を調べます。相続人である以上は、ご自身の戸籍を辿っていけば必ずどこかで被相続人の戸籍につながります。そこから、一つ一つ戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍)を取っていけば、死亡の記載のある戸籍謄本に辿り着きます。そして、その戸籍についての附票を取れば、そこに最終の住所が記載されているわけです。

ただし、被相続人が直系尊属(父母、祖父母)では無く、伯父(叔父)や伯母(叔母)などの場合、一般の方がご自分で戸籍謄本等を取り寄せて調査を行うのは極めて困難だと思われます。そのようなときでも、相続放棄の手続きを司法書士にご依頼くだされば、戸籍等の取得による調査の全てをお任せいただけます。

相続放棄をする際に、戸籍等の取得および家庭裁判所への申立ての全てをおこなうことができるのは、司法書士と弁護士のいずれかに限られます。『相続放棄の相談室』を運営する松戸駅徒歩1分の高島司法書士事務所では、相続放棄のご相談・ご依頼を承っています。