相続放棄できるかの判断(家庭裁判所での申述受理の審理)

相続放棄をしようとする際、家庭裁判所にその申述が受理されるかを不安に感じる方も多くいらっしゃいます。けれども、家庭裁判所での実務において、相続放棄は実質的な要件を欠いていることが明白である場合に限り、申述を却下するとの取扱いがなされています。

相続放棄の申述がされた場合、相続放棄の要件の有無につき入念な審理をすることは予定されておらず、受理がされても相続放棄が実体要件を備えていることが確定されるものではないのに対し、却下されると相続放棄が民法938条の要件を欠き、相続放棄したことを主張できなくなることにかんがみれば、家庭裁判所は、却下すべきことが明らかな場合以外は、相続放棄の申述を受理すべきであると解される(東京高等裁判所平成22年8月10日決定)。

家庭裁判所へ相続放棄の申述をしたときは、相続人によるものであること相続人の真意に基づくものであることといった形式的な審理に加え、実質的な要件についての審理もおこなわれます。相続放棄が受理されるために必要な、実質的な要件とは、(1)相続放棄の申述が法定期間内にされたこと、(2)法定単純承認の事由がないことの2つです。

上記の裁判例によれば、家庭裁判所では、相続放棄の要件の有無につき入念な審理をすることは予定されておらず、却下すべきことが明らかな場合以外は、相続放棄の申述を受理すべきであるとされているわけです。それでは、申述が受理されるための上記の2つの要件を満たしているかはどのように判断するのでしょうか。

1.相続放棄の申述が法定期間内にされたこと

相続放棄ができる期間(法定期間)は、民法915条1項で定められています。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)

第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、相続開始の原因である事実、および自分が法律上の相続人となった事実を知った時です。

「相続開始の原因である事実」とは被相続人が死亡した事実です。また、「自分が法律上の相続人となった事実」とは、被相続人の配偶者または子が相続人であるときは、被相続人が死亡した時と同時です。したがって、被相続人の死亡したのを直ちに知ったのであれば、死亡した時から3ヶ月以内が相続放棄ができる法定期間となります。また、もしも死亡の事実を知らなかったとすれば、死亡したのを知った時から期間が開始します。

ところで、被相続人の直系尊属や兄弟姉妹が相続人となる時は、「自分が法律上の相続人となった事実」を知った時が、上記とは異なることがあります。なぜなら、被相続人に子がいれば直系尊属や兄弟姉妹は相続人には当たらないので、相続開始の原因である事実を知ったとしても、自分は法律上の相続人となっていないからです。

ところが、被相続人の子が相続放棄した場合には、次順位相続人である直系尊属(または、兄弟姉妹)が相続人となるわけです。つまり、自分が法律上の相続人となった事実を知った時というのは、先順位相続人である被相続人の子が相続放棄をしたことを知った時であるわけです。

相続放棄ができる期間についてさらにくわしい解説は、相続放棄できる期間(3ヶ月の熟慮期間の起算点)のページをご覧ください。

2.法定単純承認の事由がないこと

法定単純承認の事由については、民法921条で定められています。

(法定単純承認)

第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

1 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び短期賃貸(民法602条)に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

2 相続人が民法915条1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

3 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

上記のいずれかに該当することとなった場合には、相続を単純承認したものとみなされ、その後に相続放棄をすることはできなくなります。したがって、相続放棄の申述をしても却下されてしまいます。

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