当事務所で3ヶ月経過後の相続放棄についての、相続放棄申述書および上申書(事情説明書)を作成して、実際に裁判所への申立てをおこない受理された事例です(個人情報の保護に配慮し、実際の事実関係とは少し変えてあります)。同じような事例であっても必ずしも受理されるとは限りませんし、裁判所に正しく事実が伝わるように上申書(事情説明書)を書くのも重要だと思われます。
申立てをするにあたっては相続放棄の手続きに詳しい専門家に依頼することをお勧めします。相続放棄の相談室を運営する千葉県松戸市の高島司法書士事務所へのご相談を希望なさる場合には、ご相談予約・お問い合わせのページをご覧ください。
3ヶ月経過後の相続放棄が受理された実例(目次)
1.市から固定資産税の納税通知書が届いたことで相続財産の存在が判明した事例
2.信用保証協会からの通知で連帯保証債務の存在が判明した事例
3.空家等対策の推進に関する特別措置法等に基づく通知が届いた事例
1.市から固定資産税の納税通知書が届いたことで相続財産の存在が判明した事例
被相続人は申述人の姉です。被相続人が亡くなる数年前から交流が無くなっていたため、死亡したことも後になって知りました。さらに、その後になって被相続人の所有不動産についての固定資産税の支払い請求があったことで相続放棄をしようと考えたものです。
平成20年 被相続人との関係悪化によりそれ以降は交流が無かった
平成24年 被相続人が死亡
平成25年 被相続人の死亡の事実を人づてに知る
平成28年 市役所から被相続人の所有不動産についての固定資産税の請求書が届く
被相続人が亡くなったときには施設に入ってため、亡くなったときには何も財産が残っていなかったのだろうと考えていた。
被相続人の住まいは遠方であり、また、亡くなったのを知ったのが相続開始のだいぶ後だったせいもあり、実際に財産の調査をしたわけではない。しかし、亡くなったのを知った後にも、遺産についての話は誰からも一切聞かされたことはなかった。
平成28年に市から固定資産税の請求書が届いた。亡くなってから何年も経って送られてきたのは、それまでは被相続人の兄が代わりに払っていたのが、同人が亡くなったことにより妹である申述人に請求が行ったのだと思われる。
被相続人の財産として判明しているのは上記不動産のみ。したがって、滞納している固定資産税が多少はあるにしても現時点では債務超過の状態ではない。このような状況で相続放棄が認められるか?
遠く離れた場所にある不動産を相続するつもりは一切ないこと。また、仮に相続したとしても申述人にとっての利用価値はないので、事実上は固定資産税の支払い義務という債務のみを引き継ぐことになること。
さらに、被相続人名義の不動産が残っているということは、被相続人の財産の処分が完了していないということであり、生前に負っている債務のあるのが心配。
上記のような事情を記載した上申書(事情説明書)を相続放棄申述書とあわせて提出し、無事に受理されました。
2.信用保証協会からの通知で連帯保証債務の存在が判明した事例
申述人は被相続人の子です。被相続人の死後3ヶ月が経過する前に、信用保証協会からの通知書が被相続人宛てに届いていました。しかし、被相続人と2人で暮らしていた配偶者(申述人の母)が、その通知書の存在を子である申述人に知らせていませんでした。
被相続人の死亡から3ヶ月が経過した後、母から上記通知書の存在を知らされた申述人が、その内容を確認したことにより相続債務の存在を知ったことで相続放棄をしようと考えたとの事例です。
平成28年3月 被相続人が死亡
平成28年5月 信用保証協会からの通知書が被相続人宛てに届く(受領したのは被相続人の配偶者)
平成28年8月 申述人が上記通知書の存在を知る
保証債務は被相続人が会社を経営していたときのもので、会社が倒産してから20年以上が経っています。その後、被相続人は長年に渡り自営で別の仕事をしていたので、会社経営当時の債務が残っているとは家族の誰もが全く思っていませんでした。
被相続人は仕事のことなどを家族に対してほとんど口にしない人だったこともあり、子である申述人が債務の存在を知るのは困難でした。被相続人の財産は少額の現預金の他は、自宅マンションの共有持分(配偶者との共有)のみだと考えていたので、相続放棄の必要があるとは全く考えていませんでした。
信用保証協会からの通知書が被相続人宛てに届いたのは、被相続人の死後3ヶ月以内のことでした。通知書を受け取った被相続人の妻は、その内容を見ること無く自宅に保管していました(高齢だというせいもありますし、通知を受け取ったものの中を見ていないというケースは決して珍しくないと思われます)。
被相続人が共有している自宅マンションの名義変更の件で、被相続人の子である申述人が母から電話で相談を受けた際、被相続人宛てに通知書が届いていることを聞かされました。電話で話をしているときに、ふと通知書の存在を思い出したとのことです。
心配になって翌日に通知書を見せてもらったことで相続債務の存在を知りました。20年以上も前の債務なので時効ではないかとも考えましたが、被相続人が生前に少額の返済を継続していたようなので、時効になっていることはなさそうです。したがって、被相続人は明らかに債務超過の状態にあることが分かりました。
通知書自体は3ヶ月以内に届いていたものの、申述人がその存在を知ったのは3ヶ月経過後であるわけです。母から知らされない限りその通知書の存在を知ることはできないのであり、従って相続債務の存在を知るのも不可能です。
よって、母から通知書の存在を知らされその内容を確認したときが、相続放棄の熟慮期間の起算点である「自己のために相続の開始があったことを知った時」であるとして相続放棄の申述をして無事に受理されました。
なお、本件では被相続人の配偶者は相続放棄をしませんでした。自宅マンションを相続することを希望したからです。もしも、配偶者も相続放棄をしようと考えた場合でも、子に相談するまでは通知書の内容を見ていなかったのですから、相続放棄は可能だったと考えられます。
債権者と直接話をしていた場合など、相続債務の存在を知っていたことが明らかな場合は別として、たんに通知書が届いてただけというようなときには、その内容を確認してから3ヶ月以内であれば相続放棄の申述は受理されるものと思われます。
通知書が届いているのだから見るべきだったともいえますが、通知書の内容を見ていないのであれば債務の存在を知らないわけですから、知った時から3ヶ月以内であれば相続放棄が可能であるわけです。相続放棄が受理されるかどうかの判断基準は、事実として債務の存在をいつ知ったかということです。
そして、相続放棄が受理された場合であっても、債権者としてはその相続放棄が無効であることを、別に民事訴訟を起こすことなどにより争うことが可能です。たとえば、通知書を送った以外にも、直接電話で話をしているとかいうような事情があれば、債務の存在を知っていたはずだからです。
3.空家等対策の推進に関する特別措置法等に基づく通知が届いた事例
被相続人が亡くなってから30年ほどが経過してから相続放棄の申述をして無事に受理されました。相続放棄をしようと思ったきっかけは、「空家等対策の推進に関する特別措置法」及び「○○市空き家等の活用、適正管理等に関する条例」に基づき、老朽化した空き家の管理についての「お尋ね」の通知が相続人宛に届いたものです。
相続関係は上図のとおりで、子Aがご依頼者である申述人です。今回のお尋ねの対象となる空き家は夫Cの名義になっています。
夫Cが昭和50年に亡くなった際の相続人は、妻であるBと長男Eでした。そして、Bが昭和63年に亡くなったことで、子AはBを経由してCの遺産についての権利義務を承継したわけです。
市からの通知は、管理状況が不適切である建物(空き家)の管理状況や権利関係について尋ねるものでした。電話で問合せをしてみると、築60年以上も経っている家屋であり取り壊しが必要であるとのことでした。
その取り壊し費用として200万円程度の費用がかかり、また、路地の奥まった場所にある狭い土地であるため再建築は不可能であるようです。したがって、Cの遺産についての権利義務を承継するとなれば、家屋の取り壊し費用を負担するのに加え、未払いの固定資産税の支払い義務も引き継がねばなりません。
非嫡出子であるご依頼者は、嫡出子である長男Eがいたことから、母であるBについての相続権が無いと思い込まされていたとのことです。また、仮に自分が母の相続人であると分かっていたとしても、Cには長男Eがいるのですから、Cの財産は既にEが相続していると考えるはずです。
したがって、母が亡くなった際、母にはプラスの財産も負債も一切無いと信じていたことについては十分な理由があるといえます。そのため、母を経由して自分がEの遺産を承継しているなどとは全く考えていませんでした。
さらに、母が死亡したときに、E所有不動産の存在について知っていたと仮定しても、その時点でも築30年以上経っている空き家であり、再建築が不可能であるのは同様です。したがって、そのような事実を知っていたとしても、母の死後すぐに相続放棄をしていたはずです。
上記のような事情説明書を添付して相続放棄申述受理の申立をしたことで、それ以上は特に詳しい事情を尋ねられることもなく無事に受理されました。相続開始から数十年が経っていても事情によっては相続放棄が可能ですし、また、今になって多額の債務が発覚したわけでは無く、不動産の存在が分かったような場合でも認められる場合もあるわけです。
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