- 被相続人の子が相続放棄した場合、相続放棄した子の子(被相続人の孫)に対して、代襲相続が生じるのか?
- 祖父よりも父が先に亡くなっている場合で、父の相続放棄をしているときには、父の代襲者として祖父の相続人になることは無いのか?
1.相続放棄した人の子に代襲相続するのか
代襲相続が生じるのは、被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、または相続人の欠格事由の規定に該当し、もしくは廃除によって、その相続権を失ったときであり、「相続人が相続放棄したとき」は含まれていないのです。
1-1.被相続人の子が1人の場合
1-2.被相続人の子が2人以上の場合
この場合で、相続放棄した子に子(被相続人の孫)がいても、その子が代襲相続して相続人となることはありません。また、子の全員が相続放棄したときには、後順位である直系尊属、兄弟姉妹などが相続人となります。
1-3.相続人である兄弟姉妹が相続放棄した場合
相続人である兄弟姉妹が2名以上いるときには、そのうちの1人が相続放棄をすれば、他の兄弟姉妹のみが相続人となります。兄弟姉妹の全員が相続放棄をしたときには、相続人がいない(相続人不存在)状態となります。
この場合、家庭裁判所が選任した相続財産管理人が、相続債権者および受遺者に対する弁済をおこない、さらに特別縁故者に対する財産の分与をします。それでも処分されなかった相続財産は、最終的には国(国庫)に帰属することになります。
2.相続放棄した父を、代襲相続するのか
平成20年に父が死亡しました。このとき、父は債務超過の状態にあったため、長男は相続放棄をしました。
その後、平成25年に祖父が死亡しました。長男は、父の相続を放棄しているのですから、父の代襲者として祖父の相続人になることもないようにも思えます。
しかし、結論としては、長男は祖父の相続人となります。父の相続を放棄しても、父の代襲相続人となる権利が奪われることはないのです。
このことは、民法939条により「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と定められていることからも明らかです。「その相続」というのは、この事例でいえば「父の相続」です。よって、祖父の相続を放棄するかどうかは、また別の話です。
それでも、父の相続放棄をしたのであれば、父に属する権利義務の一切を引き継がなくなるのではないか?との疑問を持つかもしれません。この点については、子およびその代襲者等の相続権を定めた民法887条により明らかになります。少し長いですが、条文の全てを次に示します。
民法第887条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定(相続人の欠格事由)に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定(相続人の欠格事由)に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
上記の条文から必要箇所を抜粋すると、代襲相続とは「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき(または、相続人の欠格事由に該当、もしくは排除されたとき、)、その者の子がこれを代襲して相続人となる」ことです。「被相続人の子の子」が代襲相続人となるのであり、「被相続人の子の相続人であること」は必要条件ではありません。
よって、父の相続を放棄した場合であっても、被相続人の子の子として、祖父の相続人となるわけです。そこで、祖父の相続も放棄しようとするならば、あらためて相続放棄の手続きをする必要があります。
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