相続人全員が相続放棄した場合(誰が財産管理をするのか)

被相続人の配偶者、子(または、その代襲者)、直系尊属(父母、祖父母)、兄弟姉妹(または、その代襲者)など、戸籍上の法定相続人に当たる人の全員が相続放棄した場合、相続財産の管理や処分は誰がおこなうのでしょうか

まず注意すべきは、相続放棄をした後であっても、相続財産の処分をおこなってしまえば、相続を単純承認したものとみなされるということです。つまり、相続放棄の申述が家庭裁判所に受理された後でも、単純承認の効果が生じてしまうわけです。

(法定単純承認)

第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

二 相続人が第905条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

そこで、相続人全員が相続放棄した場合で、相続財産の管理や処分が必要となるときには、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらわなければなりません。そして、選任された相続財産管理人が、相続財産の管理、清算をおこなうことになります。

ただし、相続財産管理人の選任を家庭裁判所に請求できるのは利害関係人(または、検察官)です。よって、相続放棄者が、自宅に置いてある相続財産の管理を求めて、相続財産管理人選任の申立てをするというようなものではありません。

利害関係人として相続財産管理人の選任申立をする場合の例としては、債権者が債権回収をおこなおうとする場合や、特別縁故者に対する相続財産分の分与を受けようとする場合、また、不動産の共有者が共有持分を取得しようとする場合などがあります。

けっきょく、相続財産管理人の選任を必要とする利害関係人が現れない場合には、相続財産管理人選任もおこなわれないということになります。この場合に、相続財産をどのように取り扱ったら良いのかについては、司法書士など専門家に相談しながら慎重に判断すべきでしょう。

なお、相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない(940条1項)とされていますから、最低限の財産管理はおこなっておくべきでしょう。

(参考)関連条文

(相続の放棄をした者による管理)

第940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない

2 第645条、第646条、第650条第1項及び第2項並びに第918条第2項及び第3項の規定は、前項の場合について準用する。

(受任者による報告)

第645条  受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。

(受任者による受取物の引渡し等)

第646条  受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。

2  受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。

(受任者による費用等の償還請求等)

第650条  受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

2  受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。

3  (第3項省略)

(相続財産の管理)

第918条 相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。

2  家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。

3  第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

(管理人の職務)

第27条  前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。

2  不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。

3 前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

(管理人の権限)

第28条  管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

(管理人の担保提供及び報酬)

第29条  家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。

2  家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。

(権限の定めのない代理人の権限)

第百三条  権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。

一  保存行為

二  代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

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