法の不知により自己が相続人となったことを知らなかったとき

誰が相続人になるかは法律(民法)により定められています(くわしい解説は法定相続人のページをご覧ください)。それでは、法律を知らなかったために「自己が相続人となったことを知らなかった」としたら、相続放棄の熟慮期間(民法915条)はいつから進行を始めるのでしょうか。

ここで問題にしているのは、「被相続人の死亡の事実を知らなかった」とか、「先順位の相続人全員が相続放棄した事実を知らなかった」というのとは異なります。このように自己が相続人となるための事実そのものを知らなかった場合には、その事実を知ったときが熟慮期間の始期となります。

ところが、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合に、その兄弟姉妹が先に亡くなっているときには、その兄弟姉妹に子がいれば代襲して相続人となりますが(民法889条2項)、被相続人の甥や姪が相続人となる場合があることを知らない人もいるでしょう(代襲相続の解説はこちら)。このようなときに、法律を知ってから3ヶ月以内であれば相続放棄が可能であるかという問題です。

・法の不知は理由して認められるのか

なお、この質問に関しての回答は、個々の事例に応じて判断されるものだと思われます。以下は、あくまでも1つの考えとして捉えてください。

まず、相続人が「法律の不知または事実の誤認のため」に、自己が相続人となったことを知らなかったときには、熟慮期間が進行を始めないというような記述もネット上には見かけます。しかしながら、「法の不知」が理由ならば無条件に熟慮期間が開始しないと断定する根拠は存在しないと思われます。

ただし、法の不知が絶対に理由にならないのかということではなく、「法律を誤解した」ことにより先順位の相続人であると信じていた場合に、熟慮期間の起算点が後に繰り延べられた裁判例が存在します。

『被相続人の死亡により相続人となった被相続人の弟妹が、法律を誤解し、被相続人の配偶者の連れ子が自分らより先順位の相続人であると信じていたため、被相続人の死亡を知ったときから3箇月経過後に相続放棄の申述をした』という事例です。

被相続人がその連れ子を養子にしていると考えていたわけではなかったため、法律事実の認識に錯誤があったわけではなかったが、法律の誤解により、自己より先順位の相続人がいるものと誤信していたのであり、この誤信に気付いた時点から熟慮期間が起算されるべきだと判断し、家庭裁判所において相続放棄の申述を却下した原審判を取り消した上、差し戻しています(仙台高等裁判所昭和59年11月9日決定)。

そのような判断をした理由について、「前認定の事実関係に徴するとき、抗告人らがこれに関する親続法・相続法を誤解したことを目して許すべからざるものとするまでの必要はないものと考える」としています。

「被相続人の配偶者の連れ子が自分らより先順位の相続人であると信じていた」場合でも、熟慮期間経過後の相続放棄が認めらるのであれば、代襲相続に関する規定を知らなかったようなときも同様に考えても良いのでは無いでしょうか。そうであれば、少なくとも誰が相続人であるかという判断に関しては、法律の不知が理由になるようにも思います。

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